広告枠を増やさずに、広告の価値を上げる方法を考えている
広告枠を増やさず、既存枠の評価をどう高めるか。広告実務の経験から、滞在時間、ビューアビリティ、音声聴取の測り方を考えます。

目次
広告収益を伸ばす最短の施策は、売れる枠を増やすことです。ただし、ページを開くたびに広告を足し続ければ、読者の体験は削られます。そこで考えたいのが、枠数ではなく、既存枠が実際に見られた時間と文脈を評価する方法です。
私はSSP、アドネットワーク、出版社系メディアの両側で、約10年広告実務に関わりました。Google Ad Managerを見ながら、枠を一つ足した場合の増収を何度も試算し、Header Biddingの効果も自分で検証しました。収益が伸びる試算ほど通りやすく、その積み重ねが画面を窮屈にする場面も見てきました。
なぜ広告モデルにしなかったのか
音声サービスは、再生前や途中へ広告を入れれば無料モデルにできます。それでも弊社では、媒体側が費用を負担する形から始めました。広告枠を一つ増やす事業に戻るなら、音声化に取り組む理由が薄れると考えたからです。
有料にすれば誠実になるわけではありません。媒体に費用を求める以上、編集工数、再生、再訪など、合意した指標で効果を示す責任があります。SaaSが機能から成果へ移る話と同じで、料金体系より、媒体の仕事がどう変わったかが問われます。
枠を増やすのと、枠の価値を上げるのは違う行為だ
枠を増やす施策は、広告インプレッションの機会を追加します。既存枠の価値を上げる施策は、その枠が見られた状態や時間を正しく測り、買い手へ説明できるようにします。後者は、広告を足さずに在庫の質を扱う考え方です。
ただし、滞在時間が長いだけでは広告価値は上がりません。音声を流して端末をポケットへ入れた時間を、表示広告への注目として売れば水増しです。音声化と動画化の違いは記事音声化サービスの比較でも、この点から書いています。
滞在時間と広告単価の間には、距離がある
音声再生セッションで滞在が延びても、広告単価が上がったとは言えません。媒体、記事、期間、流入元をそろえた測定が必要で、条件は音声化の効果検証に残すべきです。ここでは、滞在から広告評価へ進む際の三つの壁を見ます。
1. ビューアビリティは閾値であって、連続量ではない
ビューアビリティとは、広告が画面内で見られる機会があったかを判定する指標です。MRCの基準では、ディスプレイ広告は原則として50%以上のピクセルが1秒以上表示された場合にviewable impressionとみなします。
これは閾値です。表示が10秒続いても、viewableという判定自体が10倍になるわけではありません。滞在が延びた場合に調べられるのは、記事下部の枠まで到達した割合や、time-in-viewと呼ばれる視認継続時間です。
- ファーストビューの外にある枠(記事下部、サイドバーの下のほう)が、視認される確率が上がる。つまり、viewable impressionとして計上されるインプレッション数そのものが増える
- 1インプレッションあたりの視認継続時間(time-in-view)が伸びる。Google Active Viewの平均表示時間のような指標が改善する
- リフレッシュ型の枠であれば、有効インプレッションが増える
リフレッシュ広告は、画面がアクティブで、枠が見える場合だけに限定しなければなりません。time-in-viewを評価する買い手は存在しますが、長ければ自動的に高単価になるわけでもありません。計測と販売条件がそろって、初めて在庫の説明材料になります。
2. CTRは、主張から外す
CTR(クリック率)は、音声化の成果として前提にしません。音声を聴く読者が広告をクリックしやすいという根拠はなく、内容への集中がクリックを減らす可能性もあります。視認、聴取、クリックは別の行動として測ります。
3. 「画面を見ていないなら、水増しでは」
画面を見ていない音声再生を表示広告の価値に含めると、実態と数字がずれます。設計上は、少なくとも次を分ける必要があります。
- 画面がバックグラウンド、あるいは非アクティブな間の再生を、滞在時間の指標から除外する
- 音声内に挿入した広告と、画面の広告枠のインプレッションを、二重にカウントしない
- 「読みながら聴く」セッションと「ながら聴き」セッションを分けて計測し、レポートでも分ける
- 音声広告は、聴取が確認できたときのみインプレッションとして計上する
私自身、広告タグの実装と検証をしてきたため、イベントが発火した事実と、人が見聞きした事実が違うことを知っています。PUBVOICEでもこの分離を設計していますが、未実装の項目を含みます。現時点では構想として扱うべき範囲です。
いま考えていること、でしかない
音声広告の挿入や、視認継続時間を使った在庫評価は、まだ検証段階です。媒体の規模、広告商品の売り方、同意管理によって向き不向きがあります。広告販売の体制がない小規模サイトでは、計測を増やす費用のほうが大きいかもしれません。
広告はメディアを支える大事な収益源です。ただ、アルゴリズム、ポリシー、景気に収益の大半を預けると、媒体側で動かせない変数が増えます。枠を足さず、実際に見られた在庫を丁寧に説明する。その方法が事業として成り立つかは、まだ測っている途中です。
執筆: 笹尾祐太朗(株式会社メディアリープ代表取締役CEO)
記事を「音」で届けるサービス、PUBVOICE
私たちが開発したPUBVOICEは、メディア運営者の作業負担を増やさずに音声体験を追加できるサービスです。RSSを登録するだけで、新しい記事が公開されるたびに自動で音声が生成されます。
「読者が記事を最後まで読んでくれない」——その悩みを聞くたびに、音声なら解決できると感じていました。通勤中、家事の合間、運動中。テキストが届かない時間に、音声は届きます。PUBVOICEは、その想いから生まれたサービスです。

笹尾 祐太朗
デジタル技術の力を借りて、一人ひとりの「やりたい」「できるようになりたい」に真摰に向き合い、技術の力で実現していく。それが私たちの使命です。
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