アドブロック時代に音声広告が機能する理由

世界のアドブロック利用率が30%に達し、Webメディアの広告収入は構造的に削られている。しかし音声広告はアドブロックで消せない。広告モデルの限界と、音声が開く新しい収益ルートを実務経験に基づいて解説する。

アドブロック時代に音声広告が機能する理由

Webメディアの収益構造に、静かながら決定的な変化が起きている。アドブロック(広告ブロック)の普及だ。

2025年の推計では、世界のインターネットユーザーの約30%が何らかのアドブロックツールを利用している。日本でも若年層を中心に浸透しており、スマートフォン向けブラウザに標準搭載されるケースも増えた。

私自身、広告で食ってきた業界の人間です。SSPやアドネットワーク側にいた人間として、メディア側の収益が削れていく構造を内側から見てきました。だからこそ、「アドブロックの影響を受けにくいフォーマット」には、個人的にも強い関心がある。

音声広告は、アドブロックの影響を受けにくいフォーマットだ。テキスト広告とは仕組みが異なり、ブラウザの拡張機能だけでは遮断しきれない側面がある。この記事では、その理由を整理する。

アドブロック普及率の推移を示すグラフ

アドブロックがメディア収益を削る仕組み

アドブロックは、Webページの読み込み時に広告スクリプトを検出して遮断するブラウザ拡張機能やアプリの総称だ。Chrome用の「AdBlock」「uBlock Origin」、スマホ向けの「Brave」ブラウザなどが代表格。

仕組みは単純だ。ページ内のDOM(HTML要素)から広告らしい要素を検出し、非表示にする。Google AdSenseのスクリプト、アフィリエイトバナー、トラッキングピクセル——どれもDOM上に存在するため、アドブロックのフィルタに引っかかる。

私がWeb広告を配信する会社でメディア開拓を担当していた2015年頃、アドブロックは「一部の技術好きの問題」だった。それが2020年には「若年層の標準」になり、2026年には「ブラウザの標準機能」になりつつある。SafariやBraveが初期設定でトラッキング防止を有効にしたことで、意識的にアドブロックを導入していなくても、実質的に広告がブロックされるユーザーが増えた。

メディア側の損失は深刻だ。PageFairの2024年調査では、アドブロック利用者の存在により、世界のパブリッシャーは年間約420億ドルの広告収入を失っていると推計されている。

なぜ音声広告はブロックされにくいのか

音声広告がブロックされにくい理由は、技術的な仕組みの違いにある。

ただし先に言っておく。完全にブロックされないわけではない。Google Ad Manager等の主要プラットフォーム経由で配信する場合、広告リクエスト自体がブロック対象になることもある。ここでは、技術的な性質の違いを整理する。

テキスト広告はブラウザ上のHTML要素として表示される。アドブロックはこの要素を検出して非表示にする。つまり、「ページ上に存在するもの」を消す仕組みだ。

一方、音声広告はオーディオストリームの一部として配信される。音声データそのものに広告が埋め込まれているため、DOMベースのブロックでは検出できない。「放送されたら聴くしかない」という点では、テレビCMやラジオCMに近い性質を持つ。

Spotifyが2024年に公開したデータによると、音声広告の完了率は90%を超えている。テキスト広告のビューアビリティが平均50〜60%であることを考えると、音声広告の「届きやすさ」は圧倒的だ。

テキスト広告と音声広告のブロック耐性を比較する図

音声広告の3つのフォーマット

メディアが導入できる音声広告には、主に3つのフォーマットがある。

プリロール広告は、音声コンテンツの再生前に流れる5〜15秒のCMだ。Spotifyの無料プランでよく聞く「この番組は〇〇の提供でお送りします」という形式。ユーザーの離脱が最も少なく、完了率が高い。

ミッドロール広告は、コンテンツの途中に挿入される。ポッドキャストでよく使われる形式で、ホストが自然に「ここでちょっとお知らせです」と紹介しながら広告を読み上げる。パーソナライズ精度が高く、広告主からの評価も高い。

ポストロール広告は、コンテンツの最後に流れる。完了率は低いが、熱心なリスナーに対してリマインド効果がある。

30社以上のメディア現場を見させてもらったなかで、ポッドキャスト形式のミッドロール広告が最も効果的だった。ホスト(またはAI音声)が自然なトーンで商品を紹介する形式は、テキスト広告よりもはるかに親近感を生む。

導入に向けた現実的なステップ

音声広告を始めるのに、最初から大掛かりな仕組みは必要ない。

まずは既存のテキスト記事に音声版を追加し、その音声の冒頭に5秒程度のプリロール広告を組み込む。自社のサービス紹介でも構わない。重要なのは、音声広告の配信フローを体験することだ。

次に、再生データを計測する。再生回数、完了率、離脱ポイント——これらのデータが広告主への提案材料になる。

十分な再生数が溜まったら、外部の広告主にアプローチする。音声広告はまだテキスト広告に比べて競合が少なく、初期の参入者にとって単価が有利に設定されるケースが多い。

正直こういうのって、失敗しないと分からないんですよね。ただ、この順番で進めればリスクは最も低くなるという感覚は持っている。

音声広告の限界

正直に言うと、音声広告にも向き不向きがある。

視覚的な訴求が中心の商品には弱い。 ファッション、インテリア、旅行など「見た目」が重要なカテゴリでは、音声だけでは魅力を伝えきれない。

クリック測定が難しい。 テキスト広告は「クリック→購入」の経路を追跡できるが、音声広告は「聴いた→後で検索して購入」の経路になる。アトリビューション(効果測定)に工夫が必要だ。

過度な広告挿入はリスナーを逃がす。 1つの音声コンテンツに3本以上の広告を入れると、離脱率が跳ね上がる。1本、長くて2本までに抑えるのが現実的だ。

広告を増やす提案をしてきた人間が言うのもなんですが、広告は減らすべき場合もある。ここはバランスの世界だ。

まとめ

アドブロックはWebメディアの広告収入を構造的に削り続けている。しかし音声広告は、テキスト広告とは異なる配信経路を持つため、収益の多角化という観点で有力な選択肢だ。

広告収益とユーザー体験はトレードオフではない。両立できるフォーマットを探す——その過程に音声広告がある。

「Web広告の課題を音声がどう解決するか」を読むと、アドブロック以外の広告課題も含めた全体像が見えてくる。

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笹尾 祐太朗

笹尾 祐太朗

代表取締役 / MediaLeap Inc.

デジタル技術の力を借りて、一人ひとりの「やりたい」「できるようになりたい」に真摯に向き合い、技術の力で実現していく。それが私たちの使命です。

デジタル技術で、すべての人に新しい可能性を。広告・メディア業界での約10年の経験を基盤に、AI技術を活用して開発効率を抜本的に高めたWebメディア向けアプリ制作を提供しています。

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