ニュース消費のトレンドは、いま大きな転換点にあります
テレビのニュース番組を習慣的に視聴するスタイルが落ち着き、スマートニュースなどのアプリでテキスト情報を追う時代を経て、私たちは今、さらに大きな変化の渦中にいます。それは、ショート動画プラットフォームが主要なニュースソースになりつつあるという現実です。
私が2015年頃、アドテク業界で広告枠の開拓に奔走していた時期は、いかに効率よく広告を届けるかという「手法」の議論が中心でした。しかし現在起きている、コンテンツの「形」そのものが変わろうとしている変化は、当時よりもさらに本質的な、メディアの在り方を問うものだと感じています。
若い世代を中心に、「能動的にニュースを探す」のではなく、「フィードに流れてきた動画から自然に情報を得る」というスタイルが定着しています。これは単なる娯楽ではなく、社会課題や世界情勢に触れるための大切な「入り口」としてショート動画が機能していることを示しています。メディア運営に携わる私たちにとって、この変化を捉えることは、これからの読者との繋がり方を再定義する大きなチャンスになるはずです。
米国と中国から見る、動画メディアの可能性
海外に目を向けると、ショート動画によるニュース消費はすでに数字としてはっきりと表れています。米・Pew Research Centerの調査では、米国の成人の約3分の1、特に18歳〜29歳の若年層に限れば約39%が、TikTokを定期的なニュースソースとして活用しています。TikTokはもはやエンタメを楽しむ場だけでなく、若者にとって欠かせない「情報のライフライン」へと進化しているのです。
また、中国の「抖音(Douyin)」では、公式メディアや政府機関が積極的にアカウントを運用し、数分間の動画で要点を分かりやすく発信しています。テキストよりも直感的に伝わり、情報のハードルを下げるショート動画は、「情報の速報性」と「理解のしやすさ」を繋ぐ架け橋として完全に定着しました。この流れは、遠からず日本でもより身近なものになっていくでしょう。

日本の現状と、これからのメディアの歩み方
現在の日本では、まだYahoo!ニュースやスマートニュースといったテキスト主体のメディアが根強く、幅広い層に支持されています。一方で、Z世代やアルファ世代の間では、TikTokやYouTube ショート、Instagram リールを通じて社会の動きを知るスタイルが急速に広がっています。
メディア事業者様から「読者層の若返り」についてご相談をいただく機会も増えていますが、これからの世代に価値を届けていくためには、ショート動画という選択肢を柔軟に取り入れていくことが、これまで以上に重要になってくると感じています。
大切なのは、プラットフォームに情報を出すだけでなく、自社のサービスの中でいかに心地よい動画体験を提供できるかという点です。AI技術の進化によって、動画制作のハードルは下がっています。自社アプリ内で動画を通じたコミュニケーションを深め、そこで得られる反応をサービス改善に活かしていく。そんな「双方向の繋がり」が、これからのメディアの強みになるのではないでしょうか。
DXの先にある「新しいコンテンツの届け方」
メディアのDX(デジタルトランスフォーメーション)といえば、かつては「Web化」や「アプリ化」を指していましたが、現在は「今のユーザーに合った最適な形(フォーマット)で届けること」が次のステップだと考えています。
私がベトナムで開発に携わっていた際、現地の若者たちがスマホで動画を自在に使いこなし、そこから多くの情報を吸収している姿を目の当たりにしました。世界的に見れば、動画主体の情報収集はごく自然な日常の一部になっています。私たち日本のメディアも、「活字離れ」を寂しく思うだけでなく、ユーザーが今いる場所へ歩み寄り、彼らが親しみやすい形で価値を届けていく。そんな柔軟な姿勢こそが、新しい時代のメディアの姿ではないかと思うのです。
まとめ
ニュース消費のショート動画シフトは、世界的な潮流であり、日本でも着実に進んでいます。米国や中国の事例が教えてくれるのは、動画が現代における「伝わりやすい言葉」の一つになっているということです。
この変化を前向きに捉え、AIなどの新しい技術を活用しながら、自社アプリやサービスの中で新しい読者体験を育てていく。激変するデジタル環境の中で、ユーザーの心境の変化に寄り添い、共に進化していく姿勢を大切にしていきたいものです。
ソース Pew Research Center: News Consumption on Social Media in 2023 Reuters Institute: Digital News Report 2024




