「史上最悪のQ4」は本当か?
── Redditで交わされたパブリッシャーの苦悩と、これからの選択肢
先日、海外のパブリッシャーが集まるRedditフォーラムで、あるスレッドが大きな注目を集めていました。 タイトルは 「Is This the Worst Q4 Ever? Looking for Industry Insights(これが歴代最悪のQ4なのか?業界の洞察を求む)」。
本来であれば最大の広告需要が見込まれる年末商戦期。しかし現場からは、「広告収益が軒並み大幅に減少している」という悲鳴に似た声が相次いでいます。今、業界全体がかつてない局面を迎えているのかもしれません。
「AIがWebを殺している」という現実
このスレッドには数百件を超えるコメントが寄せられ、その多くが収益減への戸惑いと、その原因への考察でした。
あるコメントは、
「原因はAIと米国経済の不況だ」 と端的に指摘しています。
また別の掲載社は、次のような厳しい実態を公開しました。
- 2016年:RPM(1000PVあたり収益) $5
- 2019年:$0.40
- COVID-19後に一時回復
- 2025年1月:$0.25まで再び下落
さらに、AIの影響については、
“It’s over. AI is killing the web.” (もう終わりだ。AIがWebを殺している) という、危機感を象徴するような言葉も見られました。
生成AIの普及によって検索エンジンからの流入が変化し、同時にAI生成コンテンツが大量供給されることで広告単価が押し下げられている——。多くのパブリッシャーが、今まさにこうした変化を肌で感じています。
私自身、2015年頃からアドテク業界に身を置いてきました。当時はプログラマティック広告の黎明期で、**「テクノロジーの進化がメディア収益を拡大させる」**と誰もが信じていた時代です。
しかし現在、AIは収益を生むツールであると同時に、コンテンツを無尽蔵に供給する存在にもなりました。結果として供給過多が起こり、メディアの価値そのものが埋没しやすくなっている。これは、かつて私たちが描いていた楽観的な未来像とは、少し異なる風景のようです。
見えない「手」と市況の変化
Redditでは、より実務的な課題も多く語られていました。
特に目立つのが、Amazon DSP や DV360(Display & Video 360)による Clawback(差額請求) への懸念です。これは広告配信後に「不適切なインプレッション」と判断され、後から収益が差し引かれる仕組みを指します。
また、ボットトラフィックへの対策を講じても改善が見られず、
「今月はディスプレイと動画の収益が 45%もタンクした(暴落した)」 と報告する掲載社もありました。
スポーツや金融など、比較的堅調なジャンルがある一方で、全体としては以下のような見方が強まっています。
- 広告出稿が年初に前倒しされている
- 年末に向けて 広告予算が絞られている
経済の不確実性が高まると、企業は支出の優先順位を厳しく見直します。残念ながら現在のWeb広告枠は、その見直し対象の筆頭になりつつあるのが現実なのかもしれません。
プラットフォーム依存からの脱却
──「Webの次」をどう描くか
Web広告の市況は、GoogleやAmazonといった巨大プラットフォームの動向に大きく左右されます。これは、メディア側ではコントロールしきれないリスクが常につきまとう構造です。
- AIによる検索体験の変化
- 広告主の予算削減
- プラットフォームポリシーの変更
これらが重なり合った結果、Webサイト単体での広告ビジネスは、これまでのような「安定した収益源」とは呼びにくい状況になりつつあります。
では、メディアはこれからどう歩んでいくべきなのでしょうか。
一つの有力な道筋は、「プラットフォームのアルゴリズムに委ねるだけでなく、読者と直接的なつながりを持つこと」ではないでしょうか。そのための現実的かつ強力な手段として、今改めて自社メディアのアプリ化が注目されています。
アプリ化がもたらす、本質的な価値
アプリ化のメリットは、単に広告枠を増やすことだけではありません。
- プッシュ通知による再訪問の促進 ユーザーに、適切なタイミングでこちらからコンテンツを届けられる
- ファーストパーティデータの活用 ユーザー行動を自社で把握し、より深い分析や施策につなげられる
- 収益モデルの多角化 広告依存から一歩踏み出し、サブスクリプションなどの安定した基盤を作りやすい
かつて、私がベトナムでのオフショア開発に携わっていた頃は、コミュニケーションや技術面のハードルが非常に高いものでした。
しかし現在は、AI技術の進化によってアプリ開発の敷居は驚くほど下がっています。かつては数千万円規模の投資が必要だったアプリ制作も、今では適切なパートナーや技術を選ぶことで、月額固定費での運用すら十分に現実的な選択肢となっています。
おわりに:
「Webが終わる」のではなく、「依存の形」が変わる時
Redditで交わされていた議論は、単なる愚痴ではありません。それは、これまでのWeb広告モデルが大きな転換期にあることを示す、現場からの切実な警鐘です。
今大切なのは、「Webの未来」を嘆くことではなく、**「その先で、いかに読者と新しい関係を築いていくか」**を模索することではないでしょうか。
AIによって環境が変わるなら、私たちメディアもまた、収益のあり方やユーザーとの距離感を変えていく必要があります。
広告の波に翻弄され続けるのか、それともメディアとしての主導権を自分たちの手に取り戻すのか。
今、私たちはまさに、その大切な一歩を踏み出すタイミングに立っているのではないでしょうか。
※参考情報:Is This the Worst Q4 Ever? Looking for Industry Insights - Reddit, Ezoic Ad Revenue Index




